事業計画書の書き方|記載項目・作成のポイントと補助金申請時の注意点

「事業計画書の書き方がわからない」
「補助金申請のための事業計画書の書き方を知りたい」
事業計画書は、全国共通の1フォーマットはなく、金融機関・補助金・取引先で様式と設問がバラバラです。汎用テンプレを1本作って終わり、というわけにはいかず、その提出先が何を見て判断するかを毎回当てにいく必要があります。
AIによって事業計画書の作成が簡単になったと思われがちですが、現場の工程数字や制度要件をそのままAIに読み込ませると、それらしく読めるものの検証不能な計画になるケースも珍しくありません。補助金審査では採点項目ごとに根拠が求められるため、そのまま提出するのは危険です。
本記事では、事業計画書に記載する5つの項目と書き方、作成時の3つのポイント、補助金申請で押さえる点を順に解説します。
補助金獲得累計約5億円、支援300〜400件前後の株式会社竹原事務所代表で行政書士の竹原敦史が解説します。
計画書づくりを相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。
事業計画書とは?

事業計画書とは、以下の項目を、文章と数字でまとめた書類です。
- どんな事業か
- 誰に向けてか
- どのように進めていくか
- どれくらいの売上と利益を見込むのか
頭の中にある事業の構想を、金融機関や補助金の事務局など、初めて読む第三者にも同じように伝わる形に書き起こしたもので、いわば事業の「設計図」にあたります。
すでに事業を営んでいる会社なら、いまの売上や体制を出発点にして、これから取り組む設備投資や新規事業の中身と、その効果を書きます。
一方、これから事業を始める方はまだ売上の実績がないため、なぜこの事業を始めるのか、これまでの経験がどう活きるのか、開業にいくら必要で開業後にどれくらい売れる見込みなのかを書きましょう。
日本政策金融公庫が、創業する方向けに「創業計画書」の書式と、洋風居酒屋・美容業・中古自動車販売業などの記入例を公開しています。創業融資を申し込むときの参考になります。
事業計画書の3つの役割
事業計画書には以下3つの役割があります。
- 経営の設計図:目的・事業内容・市場・実行体制・資金・収益を整理する
- 説明・判断の資料:金融機関や補助金の事務局など、第三者が計画を理解し、実行できそうかを判断するためのもの
- 経営者自身の整理ツール:構想を言葉と数字に落とし、「資金は足りるか」「需要の根拠はあるか」といった検討点を見える化するためのもの
創業期はとくに、3つ目の整理ツールとしての役割が大きくなります。開業に必要な設備・内装・当面の運転資金を合計し、そのうち自己資金でいくら用意し、融資や補助金でいくら補うのかを書き出すと、足りないお金と、借りる・申請する理由がはっきりします。融資で手元の現金に厚みを持たせ、補助金で経費の一部を補う組み合わせが推奨されます。
このように事業計画書は、創業融資、補助金申請、社内・取引先への説明など幅広い場面で使われ、場面によって読まれ方が変わります。主な場面は次の4つです。
| 使う場面 | 事業計画書の主な役割 |
| 創業融資 | 事業が続き、借りたお金を返せる見込みがあるかを判断してもらう |
| 補助金申請 | 制度目的に沿った投資かどうか、記載内容の妥当性を審査する |
| 社内・取引先 | 経営方針の共有と、意思決定の材料にする |
| 事業連携・進捗管理 | パートナーとのすり合わせや、計画と実績の照合に使う |
提出先ごとに様式名や項目数は異なりますが、中身の論点は共通しています。
次の章で、共通している5つの論点を整理します。
事業計画書の主な記載項目|5つの柱と書き方

事業計画書の主な記載項目は、企業概要・事業内容・市場と販売・体制と日程・収支と資金の5つに整理できます。
ただし、法律や全国共通で「この見出し・この項目数」と決まったフォーマットはなく、金融機関・補助金の事務局・取引先など、提出先ごとに様式と設問が異なります。テンプレートや公募要領が渡されているときは、そこに書かれた項目名・順序どおりに記入してください。
ちなみに、計画の中身を細かく書き分けると、論点は次の11個ほどに広がります。
- 会社・事業者の概要(所在地、設立、資本、組織)
- 代表・担当者の経歴、役割、創業・事業開始の動機
- 商品・サービスの内容と提供の流れ
- 強み・差別化と、その根拠
- ターゲット顧客、市場の動き、需要の根拠
- 競合と自社の立ち位置
- 販売・集客の方法(チャネル、施策)
- 人員計画、役割分担、協力先・外注
- スケジュール、マイルストーン
- 売上・費用・利益の見通し(年次)
- 必要資金、使途、調達の方法とタイミング
ここで解説する5つの項目は、補助金申請や融資など多くの場面で共通します。また、提出先が決まっていない段階の方や、様式の欄を埋める際にも活用できます。
1. 企業概要・創業者プロフィール
企業概要・創業者プロフィールは、運営母体の情報と経営者の経歴・創業動機を書く部分です。
ここで書く内容のポイントは、事業内容や数字よりも「どんな会社が・誰が実行するのか」です。内容が薄いと、売上予測や投資計画が誰の実績・能力に基づくのかが伝わらず、計画全体の信頼性が下がるリスクがあります。
法人名、所在地、設立年、資本金、従業員数、主要取引先、直近の売上規模など、会社の輪郭が一目で分かる事実は、表や箇条書きで先に置きましょう。
創業期は、職歴や資格を時系列に並べるだけでは不十分です。なぜこの事業を始めるのかと、その経験・スキルが、計画書に書く商品・サービスの提供にどう活きるかを説明できるかが重要となります。
2. 事業内容・特徴
事業内容・特徴は、提供する商品やサービス、ターゲット、提供の流れ、競合との差別化を書く部分です。
計画書の中心は「何の事業で、どう稼ぐのか」です。ここが曖昧なままだと、市場や収支の数字まで根拠がないように見えてしまうため、提供内容と強みをはっきり書きます。
たとえば、設備投資を伴う計画では、導入後に「何の作業をやめ、浮いた時間を何に充てるか」まで書くと、投資の意味が伝わりやすくなります。「高品質」「お客様第一」といったどの会社にも当てはまる表現は避け、誰に、何を、どの工程で提供し、他社と何が違うかを具体的に書きましょう。
競合との違いは価格だけにせず、納期、対応範囲、技術、立地、実績件数など、第三者が確かめられる軸で示します。
3. 市場環境・マーケティング戦略
市場環境・マーケティング戦略は、ターゲット層、市場の動向、競合、販売方法を書く部分です。
商品やサービスがよいだけでは、売上予測の根拠になりません。収支の前提が妥当かを判断される際には、需要がどこから生まれ、どのチャネルで届くかが見られます。
たとえば、既存取引先からの具体的な引き合い、過去に断った案件の件数と金額、競合が手を付けていない小ロット・短納期の領域など、足元の需要を材料にすると説得力が増します。
そのため、市場規模の統計を載せるだけで終わらせず、自社の商品が売れる理由までつなげてください。販売方法は、直販・代理店・Web・展示会などのチャネルごとに、「誰が・何を・どのコストで」動くかまで落とし込みます。
4. 体制・スケジュール
体制・スケジュールは、人員計画や役割分担、外注・協力先、マイルストーンを書く部分です。
事業内容や数字が整っていても、誰がいつまでに何を完了させるかが見えない計画は、実行できないと評価される可能性が高いです。補助金申請の場合は、計画どおり実行できるかを確認される項目になります。
体制は、代表・現場責任者・経理・外部支援者など、役割分担が読み取れるように書きましょう。「代表が全部やる」だけでは実行できるかが伝わりにくいため、実在する役職・体制のレベルで担当を示してください。
スケジュールは、見積取得、導入・試運転、販売開始など、前の工程が終わらないと次に進めない順序が分かるように並べ、無理のない日程にします。補助金申請では、様式にある事業計画名(表題)も審査で先に読まれます。不採択例を見ると「設備導入による効率化」のような汎用名が多いのも事実です。
「対象設備(具体的な手段)」 × 「解決する構造的ボトルネック(現場の課題)」 × 「創出する付加価値(事業のゴール)」。この3つの要素を、1つのタイトル(30文字程度)の中に凝縮させましょう。
5. 収支計画・資金調達計画
収支計画・資金調達計画は、売上・利益の見通(多くの様式で3〜5年分)、資金の使途、調達方法を書く部分です。
ここまでで示した事業・市場・体制が、お金の面でつながっているかを読み手が最終確認する章です。返済原資や投資回収の観点から、売上だけでなく費用・利益・資金繰りまで一貫しているかが問われます。
売上の伸び方と、人件費・原材料・外注・減価償却・借入返済は同じ前提条件で組み立て、利益・返済・手元資金がどう動くかまで示してください。
株式会社竹原事務所が支援した部品加工業では、当初7,000万円規模の設備案を、返済余力から逆算して4,000万円に絞り、採択に至った例があります。
自己資金・借入・補助金の順序と、立替が発生する期間まで書いておくと、後の資金繰りで慌てにくくなります。
自社のボトルネックを数字に落とし込むのが難しい方や、収支と投資額のバランスに迷っている方は、下記よりお気軽にご相談ください。株式会社竹原事務所では、現場の工程を一緒に分解するところから計画書づくりに入ります。
事業計画書を作成する際の3つのポイント

事業計画書を作成する際のポイントは、次の3つです。
- 客観的な根拠を示す
- 専門用語を避けて簡潔に書く
- テンプレートを活用する
単に枠を埋めるだけでは不十分です。3つのポイントごとに、実際にどう書くかまでわかりやすく解説します。
客観的な根拠を示す
売上予測や経費は、見積書・過去の実績・稼働データ・取引先からの引き合いなどを基に算出します。
とくに収支・市場・効果の記述は、根拠が弱いと計画全体の信頼を落としやすい部分です。「この見通しは何に基づいているか」と疑問を抱かれないように自社のデータから数字を組み立ててください。
たとえば加工業なら、過去の受注件数と単価、稼働率、キャパシティの上限から、初年度の売上レンジを逆算する書き方が有効です。
設備投資を書く場合も、「老朽化しているから買い替えたい」といった説明だけにとどめず、いまの設備や体制ではどこまで対応できるかを、稼働時間・処理件数・対応できる売上規模など、数字で示せる資料とセットで記載すると、投資の必要性が伝わりやすくなります。
数字ごとに根拠の資料を手元に残しておくと、金融機関や事務局から質問を受けたときも、同じ根拠で説明できます。
専門用語を避けて簡潔に
計画書は、図や表を使い、誰が見ても要点が伝わる言葉で書きましょう。
補助金の審査では、事業の専門家ではない担当者が計画書を読むこともあり、用語が難しすぎると「何の事業か・何をしたいのか」が伝わる前に読み飛ばされやすくなります。実際、専門用語を減らし、公募要領の項目と本文を1対1で対応させ直して採択に至った例もあります。
工程フローやBefore/Afterの表を使うのも有効です。1文に複数の論点を詰め込まず、見出しごとに結論を先に書くと読みやすくなります。
AIを活用する際は、AIの添削で高得点に見えても、審査項目ごとの根拠が結びついていなければ不採択になり得ます。
テンプレートを活用する
提出先から様式が渡されているときは、その様式を正本にして書きます。項目名や順序が様式で決まっている場合、ゼロから章立てを考えると、読み手が必ず見る設問を書き忘れがちです。
様式が渡されない場合は、J-Net21「事業計画書の作成手順」から、Word版・PDF版の事業計画書フォーマットをダウンロードできます。記入の参考には、作成例(飲食・小売・サービス)も使えます。
テンプレートは設問の漏れを防ぐために使い、中身の数字とストーリーは自社のデータで埋めてください。
補助金申請の事業計画書で押さえるポイント

補助金の事業計画書は、5つの柱をベースにしつつ、公募要領の様式に沿って、制度の目的に合った投資かどうかを審査してもらう申請書類です。
一般の事業計画書と比べて、補助金申請で外せない4つのポイントを解説します。
ポイント1|公募要領の様式を正本にする
補助金の事業計画書は、制度・回次ごとの公募要領と様式が正本です。5つの柱の下書きや社内用の資料をそのまま流用すると、設問漏れや章立てのずれが起きやすくなります。
審査では、その投資で付加価値や賃金がどう伸びるかまで見られるため、一般の事業計画書と同じ論点でも、様式の設問と分量に合わせて書き直します。
章立ては申請する制度の様式が最優先で、様式が決まる前に整理するときの章の目安は次のとおりです。
| 章 | 書くこと |
| 企業概要・事業環境 | 事業内容、主要取引先、売上推移、市場環境 |
| 強みと課題 | 自社の強み、工程ごとのボトルネック、損失額 |
| 補助事業の内容 | 導入する設備・システム、独自の工夫、経費 |
| 期待効果 | 工数削減、付加価値額、労働生産性、賃上げ |
| 実施体制・スケジュール | 担当者、外部支援者、交付決定後の工程 |
| 収支計画 | 3〜5年の売上・利益、資金調達 |
書き始める前に、次の3点を決めておきます。
- 制度:申請する補助金の名称・枠
- 回次:対象となる公募回と公募要領
- ストーリー:課題→投資→効果の流れの骨子
3つが決まったら、その回の様式と設問を開いた状態で書き始めます。
ポイント2|3軸(必要性・実現可能性・効果)がつながる計画にする
多くの補助金審査では、必要性・実現可能性・効果の3点が、重視されます。
審査項目ごとに判断される内容と書く内容を以下の表にまとめました。
| 審査の軸 | 判断される内容 | 主に書く章 |
| 必要性 | 課題の深刻さ、投資しないと解決できない理由 | 現状・課題、補助事業の内容 |
| 実現可能性 | 体制、スケジュール、資金調達、技術的な裏付け | 実施体制、スケジュール、収支計画 |
| 効果 | 工数削減、付加価値額、労働生産性、賃上げ | 期待効果、収支計画 |
書き始める前に、まずは公募要領冒頭の「事業の目的」を、人手不足・専用設備・付加価値・賃上げなどキーワード単位で分解しましょう。計画書のどの段落がどれに答えるか対応表を作っておくと、設問漏れとストーリーのズレを防ぎやすくなります。
株式会社竹原事務所に寄せられる不採択の申請書では、販路開拓の補助金なのに設備更新だけを書いているなど、制度目的とのずれが多く見られます。補助金は文章の上手さより、制度目的と投資内容の設計で読まれる場面が多いです。
ポイント3|主要な章ごとに、課題・投資・数字・体制を整合させる
公募要領の様式で記入するときは、課題・投資・数字・体制が章をまたいで同じ前提になるよう、次の表どおりに数字・工程名・品目名をそろえます。
表の「照合する章」は、セットで数字や前提が食い違わないか確認する章の組み合わせです。
| 照合する章(セット) | そろえる内容 | 書くときの要点 |
| 現状・課題と補助事業内容 | 課題の数字と、投資の対象・補助対象経費 |
|
| 期待効果と収支計画 | 効果の算定前提と、収支・賃上げの前提 |
|
| 実施体制・スケジュール・添付資料 | 体制・工程・提出書類の数字 |
|
現状・課題は、工程ごとの時間を分解して書き始めると、投資内容と効果の章につなげやすくなります。
要件を満たす見通しが立たない数字は無理に合わせず、制度選びから見直しが必要なケースもあります。
ポイント4|補助金ごとに、審査の核となる論点の章をいちばん厚く書く
補助金ごとに審査でいちばん見られる論点が違うため、その論点に対応する章を、計画書でいちばん厚く書きます。
以下のように補助金ごとに論点は異なります。
| 制度・枠 | 審査の核となる論点 | 様式・申請の特徴 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓の取り組みと、その効果 | 商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書が必要 |
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 省人化の効果、専用設備の必然性、投資回収、賃上げ | 事業計画書(様式)と電子申請 |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(革新的新製品・サービス枠) | 新製品・新サービスの革新性、付加価値額・賃金の伸び | 専用の電子申請システムで申請 |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(新事業進出枠) | 自社にとっての新製品と新市場、市場性、事業化の見込み | 専用の電子申請システムで申請 |
制度を選んだあとは、選んだ行の審査の核となる論点を軸に据え直しましょう。
各制度の申請条件・補助対象経費・申請の流れは、以下の制度ごとの解説記事で詳しく紹介しています。
省人化・自動化の設備投資を検討している方は、下記の記事をご覧ください。
まとめ

事業計画書は、企業概要・事業内容・市場と販売・体制と日程・収支と資金の5つの柱を、根拠付きの数字と分かりやすい表現でそろえる書類です。
補助金申請では公募要領の様式を正本にし、必要性・実現可能性・効果の3つの軸が計画書全体でつながっているかを確認してください。
株式会社竹原事務所は、行政書士・認定経営革新等支援機関である代表の竹原敦史が、補助金の計画書づくりから交付申請、実績報告、事業化状況報告まで伴走しています。
事業計画書の書き方に迷っている方、採択後の手続きまで見据えて計画を作りたい方は、ぜひご相談ください。









